秋の夜長におすすめ!言葉にしない「アイ・ラブ・ユー」印象的な3作品をご紹介
掲載日:2021年11月11日

秋の夜長におすすめ!言葉にしない「アイ・ラブ・ユー」印象的な3作品をご紹介

記憶に残る恋愛映画はなんですか?
一説にはすべての映画は「恋愛映画」だといわれていますが、皆さんは恋愛映画といわれてどんな作品を思い出しますか?恋愛映画といっても千差万別。恋が成就するまでを丁寧に描いたものから、社会問題を描くように見えて実は愛とは何かを考えさせる作品までさまざまです。
今回ご紹介するのは恋愛というより“愛”について描いた作品。それぞれの時代で大ヒットしたこの3作品です。

言い換えられたアイ・ラブ・ユー 『ローマの休日』(1953)

ローマ支局のアメリカ人新聞記者ジョー(グレゴリー・ペック)と、ヨーロッパ諸国を表敬訪問中のある国の王女アン(オードリー・ヘプバーン)。本来、出会うはずのない2人の秘めた恋を描きます。
迎賓館を抜け出したものの、医者が処方した睡眠薬のためにトレドの泉の縁で眠りこけていたアン王女。ジョーは見かねて連れ帰りますが、翌日、王女であることに気づき、スクープをものにしようとローマ観光に連れ出します。
髪をショートにし、スペイン広場でジェラートを食べ、ベスパに乗って市内を散策し、真実の口でドッキリを仕掛けられ、サンタンジェロ城前を流れるテヴェレ川でダンスに興じ、自由を謳歌するアン王女。そんな時間を共有するうちに2人の心に相手を好ましく思う気持ちが芽生えます。でも気持ちを口にすることすらできない2人。


ローマを去る日、アン王女は記者たちに、「最も楽しんだ都市はどこか?」と聞かれます。「それぞれの都市が、それぞれの理由で忘れがたく」と優等生な答えを口に仕掛けたアン王女は思い直したようにこう言います。「ローマ!なんと申しましてもローマです。この地での思い出を生涯記憶にとどめておきたいと思います」。御存知の通り、これはジョーにしか分からないアン王女からの「アイ・ラブ・ユー」ですね。
『ノッティングヒルの恋人』(1999)にも似たシーンが。「馬と猟犬」の記者に成りすまして記者会見場に入り込んだタッカー(ヒュー・グラント)が、ハリウッド女優アナ(ジュリア・ロバーツ)に質問するシーンです。古本屋の主人であるタッカーは釣り合うはずがないと怖気づき、アナからの求愛を断ってしまっていたのでした。
タッカーの質問はこれ。「もしタッカー氏が自分のバカさ加減に気づき、もう一度やり直したいと言ったらどうしますか?」。これも形の違う「アイ・ラブ・ユー」ですね。

言葉に代わるアイ・ラブ・ユー 『幸福の黄色いハンカチ』(1977)

夕張炭鉱で働く勇作(高倉健)とスーパー務めの光枝(倍賞千恵子)。孤独な2人は惹かれ合い、結婚して子どもができますが、光枝は流産してしまいます。父親を戦争で亡くした勇作は、家族を持てると有頂天になっていた反動で、盛り場でケンカをして人を殺めてしまいます。
映画は、勇作が刑務所を出たところから始まります。失恋で失意の北海道旅行中の若者2人(武田鉄矢、桃井かおり)と知り合い、紆余曲折、夕張に向かう勇作。勇作と観客を目的地に向かわせる原動力は、勇作の出した「まだ待っていてくれるなら、庭先に黄色いハンカチを吊るしておいてほしい」と記したハガキでした。
多くの方が答えを知っているこの映画ですが、黄色いハンカチが告げる結論もまた一種の「アイ・ラブ・ユー」なのでしょう。黄色いハンカチが意味するところは、アメリカの「愛する人の無事を願う」という使われ方がもとになっています。ピート・ハミルの書いた原作コラム“Going Home”に登場します。

自由という名のアイ・ラブ・ユー 『きみに読む物語』(2004)

毎日、療養施設にいる認知症の女性(ジーナ・ローランズ)を訪ね、読み聞かせを続けている年配の男性(ジェームズ・ガーナー)。最初はいつも嫌がる女性ですが、読み進めるうちに「早く続きを」と先を促すように変化していきます。
男性が読み聞かせる物語の主人公は、アメリカ南部、シーブルックの材木工場で働く青年ノア(ライアン・ゴズリング)と、避暑に訪れた17歳の資産家の娘アリー(レイチェル・マクアダムス)。育った環境の異なる2人は恋に落ちますが、周りが思うような“ひと夏の恋”ではありませんでした。親によって強制的に引き離され、ニューヨークの大学に通うようになるアリー。ノアは毎日彼女に手紙を書きますが、返事は一度も来ません。
別な人生を歩むかに見えた2人ですが、ある日、ノアは町で美しく成長したアリーを見かけます。結婚を控えたアリーもまたノアが農場を買い取ったというニュースを新聞で目にします。けじめをつけるべくノアの農場を訪れるアリー。彼女が目にしたのは、実行されたかつての約束の完成形でした。
ノアが数年かけて農場の屋敷内の見晴らしのいい場所に設えたのは、絵が好きなアリ―のためのアトリエ。ノアの「アイ・ラブ・ユー」は、アリーの居場所を作り、やりたいことができる自由を贈ることでした。
そして老婦人と読み聞かせをする男性とは?
そう。『きみに読む物語』は、とても長い時間を経ても色あせることのない愛についての物語なのです。
***
言葉にしない「アイ・ラブ・ユー」。胸にグッと響きますね。あなたの記憶に残っているのはどんな恋愛映画ですか?"

関口裕子 プロフィール

「キネマ旬報」、エンタテインメント業界紙VARIETYの日本版「バラエティ・ジャパン」編集長を経て、フリーランスに。執筆、編集、コンサルタントとして活動中。趣味は、歴史散歩。

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