【イベントレポート】「キネマ旬報元編集長 関口裕子と語る映画」
掲載日:2021年09月27日

【イベントレポート】それぞれの作品がいまの人生につなぐこと

オンライントークイベント「キネマ旬報元編集長 関口裕子と語る映画」。
なんだか仰々しいタイトルですが、要するに映画をネタに皆さんと楽しいお話をしようという企画です。

その第一回目を「初めて観た映画はなんですか?」というお題で9月10日に開催致しました。
一回目なので“初めて観た映画”にかこつけて、自己紹介もさせていただきました。

親に初めて連れて行ってもらった映画、初めて友だちと行った映画、大学に入って初めて観た映画、大学卒業後勤務した会社を退職したときに出合った映画、それぞれの作品がいまの人生へとリードしてくれたことをお話しました。

その後は、皆さんにも初めて観た映画”について語っていただきました。

『エクソシスト』『猿の惑星』『ターザン』『鉄道員』

オカルト映画がブームとなったとき、大ヒットした『エクソシスト』(1973)を初めて1人でご覧になったという方は、怖くて内容は覚えていないという「あるある!」な思い出を語ってくださいました。「エクソシストのテーマ」として有名になった曲「チューブラー・ベルズ」を聴くと、今でも怖いことが起きそうな気がします。

大学に入学して初めて観に行った映画が『猿の惑星』(1968)だとお話しいただいた方は、映画を観に行けるようになったことで受験が終わった解放感を味あわれたのだそう。熊本市内の上通町にあった映画館で観たこの映画に嵌まって、シリーズとなった作品が公開されるたびにご覧になったと話してくださいました。

1940年生まれと自己紹介いただいた方が、初めてご覧になった映画は、戦後、お父さまと一緒に浅草で観た『ターザン』とのこと。ターザン役はジョニー・ワイズミュラーだったのでしょうか?動物たちとジャングルを駆け巡るターザンの姿に胸ときめかせ、映画の面白さを知ったのだそうです。ピエトロ・ジェルミ監督の『鉄道員』(1956)を観たのは中学生のとき。その後、ジャンルや国を問わず、いろいろな映画を観に、毎週のように映画館に通ったと教えてくださいました。

『スキャンダル』『ピンク・レディーの活動大写真』『二人の銀座』

今回はオーディエンスでと参加された方にも急遽、お話をうかがいました。

小学生になるかならないかの頃、ご両親に連れて行かれた映画館の暗闇が怖くて、すっかり映画館嫌いになってしまったとのこと。それでも最近シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー主演の『スキャンダル』(2016)をご覧になったとの告白に、皆さんから「おお!」と驚きの声があがりました。でも残念ながら音響の大きさが合わなかったそう。究極映画館でなくても、DVDやテレビと好きな方法で楽しんでいただければいいのかなと思います。

お婆様に連れられて『ピンク・レディーの活動大写真』(1978)を観に行ったことを話していただいた方が、買ってもらったパンフレットをいまも大切に保存されているという話には、再び皆さんから感嘆の声が出ました。同時上映が山口百恵さん、三浦友和さん主演の『炎の舞』だったとのこと。いま思えば山口百恵さんの映画には、西河克己監督(『伊豆の踊子』など)、大林宣彦監督『ふりむけば愛』(1978)、藤田敏八監督『天使を誘惑』(1979)、市川崑監督『古都』(1980)など名匠と言われる監督が多く参加されており、タレントとして大切にされていたことが分かります。

小学校2年生のときに和泉雅子さん、山内賢さん主演の歌謡映画『二人の銀座』(1966)を、スケートを習っていた友だちと一緒に観に行ったと話してくださった方。親には内緒だったために、映画の内容より秘密を持った記憶のほうが大きいのだと告白(!)してくださいました。皆さん、「あるある」というようにうなづいていらっしゃったのが印象的で、1人で、または友人と初めて行った映画には“大人”になったという自覚を刺激する効果があるのかもしれません。

<映画によって人生を変えられた人々の映画>2作品をご紹介

ひとつの映画を皆さんで観て、あの場面の意味は?あの伏線はどこで回収されていた?などと話すのも楽しいですし、自分の体験的記憶に照らし合わせて思い出してみるのも楽しいものです。

私自身、観た映画によって現在に導かれた者であることもあり、最後に映画によって人生を変えられた人々が登場する映画を2本ご紹介しました。

一本はタナダユキ監督、高畑充希さん、柳家喬太郎さん、大久保佳代子さん出演の『浜の朝日の嘘つきどもと』。もう一本は、山田洋次監督、沢田研二さん、菅田将暉さん、宮本信子さん、永野芽郁さん主演の『キネマの神様』。

『浜の朝日の嘘つきどもと』では、高畑充希さん演じる浜野あさひが、失った居場所を映画館に見い出し、そこで観た映画のシーンに生きるヒントをもらいます。

『キネマの神様』では、映画監督を志すも挫折した若き日の円山郷直が、すべてを失ったかに見えた晩年、映画によって再生する物語となっています。

風が吹けば桶屋が儲かるではありませんが、何が人生に幸いするかますます分からなくなっている昨今。映画を俯瞰的に観ることで人生のヒントを見出すことができるような気がします。

【全国にて上映中】
◆『浜の朝日の嘘つきどもと』公式サイト: https://hamano-asahi.jp/
◆『キネマの神様』公式サイト: https://movies.shochiku.co.jp/kinema-kamisama/
<映画によって人生を変えられた人々の映画>2作品をご紹介

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