読書日記

『スペース』 読書日記369 

2024年05月09日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記


加納朋子『スペース』東京創元社(図書館)

駒子シリーズの第3巻であるが、前2書が1992年(文庫化は1999年)と1993年(文庫化は2000年)であるのに対し、この本は単行本が2004年(文庫化は2009年)の出版であり、実に10年以上の間隔がある。さらに、なんと今年の1月には20年ぶりにシリーズ第4作『1(ONE)』が発刊されたという。いやはや、息が長いと言うか、「日常の謎」は書くにはさほど難しいものなのか、判らないなりに感慨を持つ。もっとも単なる読者である私は加納朋子を発見し損なっていたおかげでたった数ヶ月の間にシリーズ4冊を読むことができるのは幸せなことだ(4冊目は未読であるが)。

借り出した本が手違いで単行本であったために、文庫本とびらの文を写しようが無い。で、出版社による文庫版の内容紹介。

前作『魔法飛行』で生涯最大の冒険を経験した入江駒子は、その余波で風邪をひきクリスマスを寝て過ごすことに。けれど日頃の精進ゆえか間もなく軽快し、買い物に出かけた大晦日のデパートで思いがけない人と再会を果たす。勢いで「読んでいただきたい手紙があるんです」と告げる駒子。十数通の手紙に秘められた謎、そして書かれなかった“ある物語”とは? 手紙をめぐる《不思議》にラブストーリーの彩りが花を添える連作長編ミステリ。伸びやかなデビュー作『ななつのこ』に始まる、駒子シリーズ第三作。解説=光原百合

出版は10年後であっても内容としては前作の時代とは1週間ほどしか空いていない時の話で
「スペース」
「バックスペース」
という二つの中編からなる。前者はいままで通りの駒子視点であるけれども、後者のバックスペースでは同じ話を別の視点で描かれ第三者からは「駒子はこう見える」という構成。しかもミステリと恋愛小説が一体化。ほっこりとした読後感が味わえた。
(なんでも、この本はwebで連載されたものとか…なるほど)

PS.読了後、いったん本を返却し改めて文庫本を借りて解説を読んだ。その解説の出だしは、内容に触れずにこの本の魅力を書くことの難しさ。悪戦苦闘(?)のあげく、解説者(光原百合)は駒子シリーズを「自分がいるべき場所(スペース)」を懸命に探そうとする若い女性たちの物語であると規定する…私としては「若い女性」ではなく「若い世代の人たち」として欲しいところだが…そして、それを「特別な人になりたい」「誰かの一番になりたい」という気持ちと重なるのではないかと推量している。なお、本編では駒子と瀬尾は一歩引いていて背景の一つである、という指摘もあり、この二人の関係はどうなるのか知りたいと結ばれている。
(2024年4月14日読了)



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