読書日記

『ちっちゃなかみさん』 読書日記278 

2023年10月22日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記


平岩弓枝『ちっちゃなかみさん』角川文庫(図書館)

この本は短篇集であるが、これを借り出したのは諸田玲子『楠の実が熟すまで』で同じ事件を題材にした短篇『遺り櫛(ノコリグシ)』がある、と解説にあり、どの様に取り扱っているのかという好奇心からである。

著者の平岩弓枝は1932年生まれの直木賞作家であり、2016年には文化勲章を受賞し、今年(2023年)の6月に亡くなり、その日付をもって従三位を贈られた。大作家と言える人であるが、脚本家でもあって「肝っ玉かあさん」や「ありがとう」などの有名作品も書いている。ちょっと読んで見るかと思っても作品数が多すぎて手を出しにくい。

しかしながら、本書によってその一端を知ることが出来たのはうれしかった。

収録作品は以下の10編。

ちっちゃなかみさん(昭和40年)
邪魔っけ(昭和39年)
お比佐とよめさん(昭和40年)
親なし子なし(昭和44年)
なんでも八文(昭和46年)
かみなり(昭和41年)
猩々乱(昭和36年)
遺り櫛(昭和35年)
赤絵獅子(昭和37年)
女ぶり(昭和44年)

前半5篇は人情物、後半5篇は芸事ものとまとめた人がいたが、肝心の『遺り櫛』は芸事ものでは無かった。言わば事件の後の物語であり、夫の浮気の相手と思われていた女が実は・・という後日譚であった。芸事ものとしてはその前の『猩々乱(ショウジョウミダレ)』が良かった。筋違いの要求に対して発狂した振りを十数年間の間通し続けてまでも藝の筋を守った父親の話である。山本周五郎の作品と言われても信じてしまいそうな凜とした作品であった。
(2023年9月28日読了)



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